たまりば

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Posted by たまりば運営事務局 at

2014年03月18日

古いカーテンの引き取り

カーテンリサイクル

カーテンが届く土曜日の朝。

琴美は、和人の部屋のカーテンを外し、フックなども丁寧に外して、きれいにたたむと、
用意していた紙袋に詰め込む。
不思議そうな顔をしている和人を見て、琴美は笑う。
「全然リサイクルについて読んでなかったって顔ね」
「・・・う、うん」
苦し紛れにうなずく和人に、琴美は紙袋を渡す。
「配達の人が来たら、新しいカーテンを受け取って、その箱の中に取り付けられている送り状を取り出して、そのまま、この紙袋に貼る」
「送り状って?」
「あ、知らないか。宅急便とかに貼ってある届け先の書いた伝票。カーテン会社がすでに
リサイクルの場所を書いてくれているから、あとは、古いカーテンの紙袋に、貼って、配達係りの人に渡せば完了!」
「へー、らくちんだね」
「じゃ、私は友達とランチしに行くから、後は和ちゃんがやってね。私が帰って来るまでにちゃんと、新しいカーテン吊っとくように」
「えええ~」
全部面倒みてくれてくれるのかと思っていた和人は、困ってしまう。

午後になって、配達の人がきた。
和人は琴美に言われた通りにする。
あっという間に、古いカーテンが引き取られ、新しいカーテンが手元に届いた。

うれしくなって、和人はすぐに新しいカーテンにフックを通し、カーテンレールに
引っかけた。我ながら器用だ。琴美より、カーテンの扱いがうまいような気がする。

午後の窓辺でカーテンを閉めると、枝とその先になった木の実の柄が、日の光に透けて、床にきれいなシルエットを作る。壁の「睡蓮」とぴったりな雰囲気だ。

ベッドに横たわり、春先の風に吹かれ、和人は、うとうとし始める。「睡蓮」と「木の実」の効果は絶大だった。

午後遅く、家に戻った琴美は、和人を呼んでみるが、返事がない。
そっと和人の部屋に近づくと、ドアが半分開いている。

琴美は、夕日がさす窓にかかった新しいカーテンと、ベッドでぐっすり昼寝をしている和人を見て微笑んだ。  


Posted by 弘せりえ at 10:23Comments(0)短編

2014年03月14日

進学祝い

カーテンをネットで探す琴美

そんな思いをボソボソと語る和人を見て、琴美は言った。
「じゃあ、カーテン、進学祝いにお姉ちゃんが買ってあげるわ」
思わぬボタ餅に、和人は驚く。
「だって、でも、悪いよ」
「・・・ったく、和ちゃんは遠慮しぃなんだから。秀人なら、大喜びで一番高いカーテン選んでくるわよ」
「高くなくたっていいんだ」
琴美は和人が真に受けているのを見て、くすくす笑う。
「わかってるって。和ちゃんの趣味にあうもので、リーズナブルなもの」
和人はうなずくと、琴美は続ける。
「それと、もうひとつ条件。古いカーテンをちゃんとリサイクルしてくれる店で買うこと」

二人は、ネットでいろんなカーテン・サイトを覗いてみた。
和人は、自然な感じのものがいいと言う。

しばらく探し続け、まずはリサイクル可能サイトを見つけた。和人に指図しながら、琴美はサイトのページを進め、リサイクルの条件を読む。
「うん、和ちゃん、ここで買おう」
「なんで?」
「一番、エコや環境問題に熱心だから。それに新品のカーテンと同時に古いカーテンを持って行ってくれるから、手間がかからない」
和人は、ふうん、とつぶやくと、早くもカーテンの柄の検索を始める。

ザーッと画面に映し出される様々な柄のカーテンに、和人も琴美も、しばし見入っていたが、自然をモチーフにした柄のページで、和人の手が止まる。
「これがいい」

和人が指差したのは、木の実がなった枝が黒のシルエットで描かれている、ブラウンのカーテンだった。落ち着いた雰囲気の中に、自然が感じられる。
「相変わらず、いい趣味してんじゃん」
琴美に褒められて、和人は得意気に笑う。
「僕、大人になったら、デザイン系に進もうかな」  


Posted by 弘せりえ at 10:54Comments(0)短編

2014年03月10日

子供部屋のカーテン

ロボット

が、しばらくして、鏡越しにうつる、部屋のカーテンに、和人はハッとする。それは、秀人と部屋を共用していた頃のまま、和人に譲られたものだが、今まで大して気にはしていなかった。が、今、驚愕の目で、カーテンを振り返り、その絵柄を見つめる。

紺色の生地に、おもちゃのロボットやロケットの柄が入った、いかにも幼稚園の男の子が喜びそうなカーテン。
「睡蓮」のポスターと見比べて、和人は笑いを抑えきれない。
「琴美姉ちゃん、この落差には気がつかなかったのかな~」

和人は幼い頃、よく、秀人に、このカーテンにぐるぐる巻きにされて泣いたのを思い出す。秀人は窓辺で、いつもこんなことを言ったものだ。
「おい、秀、今、UFOが上空にいる!」
幼い和人は、兄の言葉を信じ、窓辺に立つ。すると、秀人は、
「うっそぴょーん」
と笑いながら、このカーテンで和人をぐるぐる巻きにして遊んだ。秀人にしてみれば、お遊びだったが、小さな和人には狭くて暗くて身動きができないのが怖くて何度も泣かされた。それでも、いつも秀人のワナにはまって、和人が泣いて、琴美が秀人をぶん殴り、和人を救出してくれる・・・ある意味、お約束のような遊びが繰り返されたものだった。

しかし小学校の中学年くらいになると、さすがに、和人もその手にはのらなかった。それくらいから、このカーテンの絵柄を見ることすらなくなっていた。

あまりに懐かしい思い出が詰まったカーテンだが、手に取ってみるとボロボロで、和人は溜息をつく。学費や制服代で、支出の多かった両親には買い替えの打診は酷なような気がしたし、自分で買うほどお金もないし、知識もない。
  
タグ :カーテン


Posted by 弘せりえ at 11:42Comments(0)短編

2014年03月08日

倉田家の末っ子

中学校

倉田家では、今年、三姉弟の末っ子、和人が中学生になる。

両親は制服や靴やカバンを用意してくれた。和人はうれしくて仕方がない。
「秀人兄ちゃんと違う中学でよかった~。全部、新品だ!」
秀人は、フンと鼻をならす。
「このチビがもう中学生か」

秀人はもう大学生だったが、自分が中学生のとき、よく小学生の和人をおちょくって遊んだものだ。
「あんたが中学の時より、背は小さいかもしれないけど、和ちゃんの中身は、今のあんたよりずっと大人よ」
社会人になった姉の琴美がダメ出しをする。琴美は大学卒業後、環境省関連の仕事をしている。雰囲気もぐっと大人っぽくなり、秀人も一目置く存在だ。
「オレは、ちょっと、やんちゃだっただけで・・・」
「今でも、やんちゃしてんじゃないわよ、このチャラ男!」
秀人は、ヘロヘロと笑いながら、ソファに崩れ落ちる。そんな姉兄をよそに、両親にお礼をいうと、和人は自分の部屋に、制服など一式持って行った。

和人は、子供の頃から、この部屋を使っている。6畳にも満たない小部屋だが、琴美が一番いい部屋を取り、次に秀人、そして幼かった和人に当たったのが、この部屋だった。

しかし、こじんまりした空間に自分の好きなものを詰め込んで、和人は最高の空間を作り上げていた。なぜか子供のくせに、モネの「睡蓮」のポスターなど壁に張っていたが、眠る前にそれを見ると、スーッと眠りにつける。秀人の部屋は相変わらず、お気に入りのアニメキャラのポスターなどが貼ってあったので、琴美は、和人のセンスをとてもほめてくれた。

和人は喜々として制服に着替え、鏡を覗き込む。ちょっと大きめなのは、この3年間で体格が変わることを見越しての母の配慮からだ。それにしても、ぐんと大人っぽく見える自分の姿に、和人は、笑みをこぼす。  


Posted by 弘せりえ at 11:55Comments(0)短編