たまりば

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2014年03月10日

子供部屋のカーテン

ロボット

が、しばらくして、鏡越しにうつる、部屋のカーテンに、和人はハッとする。それは、秀人と部屋を共用していた頃のまま、和人に譲られたものだが、今まで大して気にはしていなかった。が、今、驚愕の目で、カーテンを振り返り、その絵柄を見つめる。

紺色の生地に、おもちゃのロボットやロケットの柄が入った、いかにも幼稚園の男の子が喜びそうなカーテン。
「睡蓮」のポスターと見比べて、和人は笑いを抑えきれない。
「琴美姉ちゃん、この落差には気がつかなかったのかな~」

和人は幼い頃、よく、秀人に、このカーテンにぐるぐる巻きにされて泣いたのを思い出す。秀人は窓辺で、いつもこんなことを言ったものだ。
「おい、秀、今、UFOが上空にいる!」
幼い和人は、兄の言葉を信じ、窓辺に立つ。すると、秀人は、
「うっそぴょーん」
と笑いながら、このカーテンで和人をぐるぐる巻きにして遊んだ。秀人にしてみれば、お遊びだったが、小さな和人には狭くて暗くて身動きができないのが怖くて何度も泣かされた。それでも、いつも秀人のワナにはまって、和人が泣いて、琴美が秀人をぶん殴り、和人を救出してくれる・・・ある意味、お約束のような遊びが繰り返されたものだった。

しかし小学校の中学年くらいになると、さすがに、和人もその手にはのらなかった。それくらいから、このカーテンの絵柄を見ることすらなくなっていた。

あまりに懐かしい思い出が詰まったカーテンだが、手に取ってみるとボロボロで、和人は溜息をつく。学費や制服代で、支出の多かった両親には買い替えの打診は酷なような気がしたし、自分で買うほどお金もないし、知識もない。


タグ :カーテン

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Posted by 弘せりえ at 11:42│Comments(0)短編
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