倉田家の末っ子

弘せりえ

2014年03月08日 11:55



倉田家では、今年、三姉弟の末っ子、和人が中学生になる。

両親は制服や靴やカバンを用意してくれた。和人はうれしくて仕方がない。
「秀人兄ちゃんと違う中学でよかった~。全部、新品だ!」
秀人は、フンと鼻をならす。
「このチビがもう中学生か」

秀人はもう大学生だったが、自分が中学生のとき、よく小学生の和人をおちょくって遊んだものだ。
「あんたが中学の時より、背は小さいかもしれないけど、和ちゃんの中身は、今のあんたよりずっと大人よ」
社会人になった姉の琴美がダメ出しをする。琴美は大学卒業後、環境省関連の仕事をしている。雰囲気もぐっと大人っぽくなり、秀人も一目置く存在だ。
「オレは、ちょっと、やんちゃだっただけで・・・」
「今でも、やんちゃしてんじゃないわよ、このチャラ男!」
秀人は、ヘロヘロと笑いながら、ソファに崩れ落ちる。そんな姉兄をよそに、両親にお礼をいうと、和人は自分の部屋に、制服など一式持って行った。

和人は、子供の頃から、この部屋を使っている。6畳にも満たない小部屋だが、琴美が一番いい部屋を取り、次に秀人、そして幼かった和人に当たったのが、この部屋だった。

しかし、こじんまりした空間に自分の好きなものを詰め込んで、和人は最高の空間を作り上げていた。なぜか子供のくせに、モネの「睡蓮」のポスターなど壁に張っていたが、眠る前にそれを見ると、スーッと眠りにつける。秀人の部屋は相変わらず、お気に入りのアニメキャラのポスターなどが貼ってあったので、琴美は、和人のセンスをとてもほめてくれた。

和人は喜々として制服に着替え、鏡を覗き込む。ちょっと大きめなのは、この3年間で体格が変わることを見越しての母の配慮からだ。それにしても、ぐんと大人っぽく見える自分の姿に、和人は、笑みをこぼす。

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