古いカーテンの引き取り

弘せりえ

2014年03月18日 10:23



カーテンが届く土曜日の朝。

琴美は、和人の部屋のカーテンを外し、フックなども丁寧に外して、きれいにたたむと、
用意していた紙袋に詰め込む。
不思議そうな顔をしている和人を見て、琴美は笑う。
「全然リサイクルについて読んでなかったって顔ね」
「・・・う、うん」
苦し紛れにうなずく和人に、琴美は紙袋を渡す。
「配達の人が来たら、新しいカーテンを受け取って、その箱の中に取り付けられている送り状を取り出して、そのまま、この紙袋に貼る」
「送り状って?」
「あ、知らないか。宅急便とかに貼ってある届け先の書いた伝票。カーテン会社がすでに
リサイクルの場所を書いてくれているから、あとは、古いカーテンの紙袋に、貼って、配達係りの人に渡せば完了!」
「へー、らくちんだね」
「じゃ、私は友達とランチしに行くから、後は和ちゃんがやってね。私が帰って来るまでにちゃんと、新しいカーテン吊っとくように」
「えええ~」
全部面倒みてくれてくれるのかと思っていた和人は、困ってしまう。

午後になって、配達の人がきた。
和人は琴美に言われた通りにする。
あっという間に、古いカーテンが引き取られ、新しいカーテンが手元に届いた。

うれしくなって、和人はすぐに新しいカーテンにフックを通し、カーテンレールに
引っかけた。我ながら器用だ。琴美より、カーテンの扱いがうまいような気がする。

午後の窓辺でカーテンを閉めると、枝とその先になった木の実の柄が、日の光に透けて、床にきれいなシルエットを作る。壁の「睡蓮」とぴったりな雰囲気だ。

ベッドに横たわり、春先の風に吹かれ、和人は、うとうとし始める。「睡蓮」と「木の実」の効果は絶大だった。

午後遅く、家に戻った琴美は、和人を呼んでみるが、返事がない。
そっと和人の部屋に近づくと、ドアが半分開いている。

琴美は、夕日がさす窓にかかった新しいカーテンと、ベッドでぐっすり昼寝をしている和人を見て微笑んだ。

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