進学祝い

弘せりえ

2014年03月14日 10:54



そんな思いをボソボソと語る和人を見て、琴美は言った。
「じゃあ、カーテン、進学祝いにお姉ちゃんが買ってあげるわ」
思わぬボタ餅に、和人は驚く。
「だって、でも、悪いよ」
「・・・ったく、和ちゃんは遠慮しぃなんだから。秀人なら、大喜びで一番高いカーテン選んでくるわよ」
「高くなくたっていいんだ」
琴美は和人が真に受けているのを見て、くすくす笑う。
「わかってるって。和ちゃんの趣味にあうもので、リーズナブルなもの」
和人はうなずくと、琴美は続ける。
「それと、もうひとつ条件。古いカーテンをちゃんとリサイクルしてくれる店で買うこと」

二人は、ネットでいろんなカーテン・サイトを覗いてみた。
和人は、自然な感じのものがいいと言う。

しばらく探し続け、まずはリサイクル可能サイトを見つけた。和人に指図しながら、琴美はサイトのページを進め、リサイクルの条件を読む。
「うん、和ちゃん、ここで買おう」
「なんで?」
「一番、エコや環境問題に熱心だから。それに新品のカーテンと同時に古いカーテンを持って行ってくれるから、手間がかからない」
和人は、ふうん、とつぶやくと、早くもカーテンの柄の検索を始める。

ザーッと画面に映し出される様々な柄のカーテンに、和人も琴美も、しばし見入っていたが、自然をモチーフにした柄のページで、和人の手が止まる。
「これがいい」

和人が指差したのは、木の実がなった枝が黒のシルエットで描かれている、ブラウンのカーテンだった。落ち着いた雰囲気の中に、自然が感じられる。
「相変わらず、いい趣味してんじゃん」
琴美に褒められて、和人は得意気に笑う。
「僕、大人になったら、デザイン系に進もうかな」

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